2016年10月23日

「労働時間管理」をめぐる役員の責任と求められる対応

「労働時間管理」をめぐる役員の責任と求められる対応

◆過労死の責任を問う全国初の「株主代表訴訟」が提起
銀行の行員だった男性が過労からうつ病を発症し、投身自殺をした事件で、
男性の妻が銀行を訴え、熊本地裁は、銀行が注意義務を怠り、
行き過ぎた長時間労働をさせたと認定し、
慰謝料など1億2,886万円の支払いを命じました(2014年10月)。
同事件では、労働基準監督署が発症直前の時間外労働時間が207時間に及んでいたと認定していました。
そして今年9月、この妻が、銀行の株主としての立場で、
当時の役員ら11人に対し、過労死を防ぐ体制づくりを怠り銀行に損害を与えたとして、
約2億6,400万円の損害金の支払いを求める株主代表訴訟を提起しました。

◆株主代表訴訟で追及される役員の責任とは?
役員は、会社に対し忠実義務を負っており(会社法355条等)、
違反すると任務懈怠責任(会社法423条1項)を負います。
株主代表訴訟では、役員の任務懈怠により会社が損害を被ったとして責任追及がなされますが、
過労死や過労自殺について任務懈怠責任を問う株主代表訴訟は初めてとのことです。

◆過労死・過労自殺で役員個人の責任を認めるケースが相次ぐ
従業員の過労自殺について役員個人の責任を認めた事件として有名なのが、
2011年5月の大庄(日本海庄や)事件における大阪高裁判決です。
同事件は、役員の第三者に対する損害賠償責任を定める会社法429条1項の規定が、
過労死・過労自殺の事案でも適用されることを明らかにしました。
2015年12月に和解が成立したワタミ過労自殺訴訟でも、
原告側によれば、和解条項で、
創業者について「最も重大な損害賠償責任を負う」ことを確認しています。
経営者による長時間労働の放置は、厳しい責任追及の対象となり得ると言えるでしょう。

◆自社の「働き方改革」を検討してみませんか?
NTTデータ経営研究所/ NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの調査によると、
長時間労働の抑制に取り組む企業の割合が2015年の「22.2%」から2016年の「32.1%」に増加し、
既に多くの経営者が長時間労働の是正に向けて動き出しています。
所定外労働時間の削減や有給休暇の取得促進に取り組む中小企業事業主は、
厚生労働省の職場意識改善助成金(職場環境改善コース)を受給できる場合がありますので、
利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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posted by はまさん at 23:44| Comment(0) | 人事・労務

「配偶者控除の存続・廃止」の議論で家族手当が変わる?

「配偶者控除の存続・廃止」の議論で家族手当が変わる?

◆配偶者控除、一転して存続へ
政府・与党は、「働き方改革」の一環として議論が進めてられていた
所得税の配偶者控除廃止について、来年度は見送りにすることを決定しました。
廃止から一転、対象範囲を広げるべきという議論も出てきています。
現時点でこの「配偶者控除」の先行きは不透明ですが、これが企業に与える影響について考えてみましょう。

◆会社員の妻の多くは「103万円の壁」にあわせてパートに出ている
会社員の妻がパートなどで収入を得ると、年収に応じて以下のものが発生します。

・100万円以上:住民税が発生
・103万円以上:所得税が発生(夫の配偶者控除がなくなる)
・106万円以上:一部に社会保険料が発生(今年10月以降、一定要件を満たす者のみ)
・130万円以上:全員に社会保険料が発生
・141万円以上:夫の配偶者特別控除がなくなる

今回議論されているのが年収103万円以上の部分で、
いわゆる「103万円の壁」です。

パートとして働く「会社員の妻」の多くが、
この「103万円の壁」を超えないよう調整しているのは周知の通りです。

◆多くの企業も「103万円の壁」に合わせて配偶者手当を支給
一方で企業側も、「103万円の壁」に合わせて家族手当(配偶者手当)を支給しています。
人事院の「平成27年 職種別民間給与実態調査」によると、
家族手当を支給している企業のうち半数以上(約58.5%)が、
手当を支給する従業員の配偶者の収入を「103万円」までに制限しています。

年末調整において、従業員の配偶者の収入が103万円の上限を超えていないか、
容易に確認できるからです。

◆配偶者控除に影響されない家族手当の議論
将来的に配偶者控除が廃止されるにせよ、
逆に対象範囲が拡大されるにせよ、
「103万円の壁」を基準として家族手当(配偶者手当)の額を定めている
多くの企業はその基準を失うこととなります。

すでにトヨタ自動車やホンダといった企業が扶養配偶者への手当を廃止し、
その分子供への手当を増額すると発表しています。

従来のままの家族手当制度を見直すべき時期に来ているのかもしれません。

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posted by はまさん at 23:36| Comment(0) | 人事・労務

2016年10月16日

職場での旧姓使用は可か否か 〜東京地裁判決から考える

職場での旧姓使用は可か否か
〜東京地裁判決から考える


◆女性教諭の訴えを棄却
私立中学・高校の30代の女性教諭が、
結婚後に職場で旧姓使用が認められず人格権を侵害されたとして、
学校側に旧姓の使用と約120万円の損害賠償を求めた裁判の判決が10月11日に東京地裁であり、
「職場で戸籍上の氏名の使用を求めることには合理性、必要性がある」として、
教諭の請求を棄却しました。

◆生徒からは旧姓で呼ばれていたが…
女性教諭は2003年から同校に勤務し、2013年7月に結婚、改姓。
学校側には旧姓の使用を認めるよう申し出ましたが、
学校側は旧姓の使用を認めませんでした。
この女性教諭は、現在はやむなく時間割表や保護者への通知などには戸籍名を使用しているそうですが、
教室内では旧姓を名乗り、生徒の多くからも旧姓で呼ばれているとのことです。

◆判決は「戸籍名の使用に合理性」
判決では、旧姓について「結婚前に築いた信用や評価の基礎となる」と述べ、
その使用は法律上保護されると位置付けています。
一方で戸籍名については、
「戸籍制度に支えられたもので、個人を識別するうえでは旧姓よりも高い機能がある」とし、
今回のように、職場の中で職員を特定するために戸籍名の使用を求めることには
合理性があると結論付けました。

◆旧姓使用は社会に根付いていない?
原告側弁護士は「現代の社会の実情が見えていない判決だ」と批判し、
控訴する意向です。

今回の判決は、男性裁判官3人が判断したもので、
旧姓を使える範囲が社会で広がる傾向にあることは認めつつも、
「既婚女性の7割以上が戸籍名を使っている」とする新聞社のアンケート結果や、
旧姓使用が認められていない国家資格が「相当数」あることを理由として、
「旧姓を戸籍名と同様に使うことが社会で根付いているとは認められない」と結論付けました。

◆国会での議論は進まないまま

旧姓使用をめぐっては、
昨年12月の最高裁大法廷判決が夫婦同姓を「合憲」と判断しています。
一方、結婚後の姓の問題については「国会で論じ、判断するものだ」ともしましたが、
国会での議論はその後進んでいません。
個人を識別するうえで、旧姓より戸籍上の姓のほうが、本当に合理性があるのか、
行政では住民票の写しやマイナンバーカードへの旧姓併記も検討され、
「女性活躍」が唱えられる中で時代に逆行するのではないか、
判決を受けて再び議論が高まりそうです。

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posted by はまさん at 23:30| Comment(0) | 人事・労務